odol
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LINER NOTES
1st EP『視線』

<自己をさらけ出し、時代の風を浴びて、odolは劇的な変化を遂げた>

「1st Album『odol』と2nd Album『YEARS』も結構違うと思うんですけど、この先「前の作品を少しバージョンアップした」みたいなものを作るつもりはないので、またしばらくしたら新しいodolをお見せできると思います」

前作『YEARS』のリリースにあたって昨年行われたインタビューで、森山公稀(Piano,Synthesizer)はこんなことを語っていた。彼のこの不敵な発言は、想像をはるかに超える形で結実した。

『YEARS』リリース後の11月に早川知輝(Guitar)が加入し、6人のバンドとして再スタートを切ったodol。1年4か月ぶりの作品となる1st EP『視線』は、鍵盤で鳴らされる和音と雷のようなノイズがミゾベリョウ(Vocal,Guitar)のシリアスな歌声を導く「GREEN」で幕を開ける。ネオソウル的な要素も感じさせる複雑なビートと物憂げに響くストリングスに乗せて歌われるのは<争いから 間違いから どうか君を守ってほしい><本当は気付いていたんだ 火の手が上がる世界 君には見せたくないと思った>といったメッセージ性の強い言葉。以前のodolにはなかったヒリヒリするような緊張感が、リスナーの耳を釘付けにする。

「ロック」という枠から完全に解き放たれたサウンドプロダクションと、怒りや苛立ちを吐露する一方で前に進もうという意思も確かに感じられるストレートな言葉。「GREEN」で示されるodolの新境地は、EP全体を通してのモードとなっている。何とも言えない閉塞感の漂う歌詞(<「未来は輝く」 そんな歌書くヤツの気が知れないね>というフレーズも登場する)を現代音楽的なアンサンブルとともに聴かせる「狭い部屋」、The Style Council「Shout To The Top」ばりのおしゃれなストリングスをバックに女性目線で日々のむなしさが語られる「私」、全編打ち込みで制作されたインタールード的な小品「またあした」、品のいいピアノとクリーンなギターの相性が良い「その向こう側」を経て今作のラストを締めくくるのは、荘厳な賛美歌にも人懐こい童謡にも聴こえる「虹の端」。<もう不安な気持ちなんて飛んでゆくよ>と歌われるサビのメロディと6本のギターのみで鳴らされる美しいサウンドが印象的なこの曲は、現時点での彼らのひとつの到達点とも呼べる出来栄えとなっている。

新たなバンドの体制、若さゆえに微細に揺れ動くメンバーそれぞれの心情、音楽シーンのトレンド、不安定としか言いようがない世界情勢。『視線』には、odolを取り巻く様々なレイヤーでの変化がタイムリーに反映されているように思える。2017年のodolにしか作れないであろう今作がリリース後にどのような反応を呼び起こすのか、そして今作を踏まえてこの先odolがどんな音楽を生み出すのか、引き続き注目していきたい。

レジー