-odolの存在や音楽はどのように知りましたか?

最近はネットで色々な音楽を聴いていて、そこで出会いました。たまたまミゾベくんが僕の高校の後輩(福岡県・西南学院高校)だったので、福岡から面白い人が出てくるのは嬉しいなぁと。
一筋縄じゃ行かない音楽性。それはやっぱり森山くんが東京藝大っていう(笑)
藝大と福岡、ちょっと特殊なセッションが、ポップスでもないし…難しい音楽でもない…新しいものを作ろうとしている二人なんだろうなと思いました。それでいて、耳にも残るメロディラインに凄く惹かれて、一時期ずっとodolをヘビーローテーションで聴いてましたね。

-odolの音楽を聴いてどう感じていらっしゃいますか?

ボーカルのミゾベくんが、「森山くんが作った音楽が凄くて、その音楽に自分の声を乗っけることによって、ちゃんと世の中の人に伝えたい」と僕のラジオ(FMヨコハマ「深夜の音楽食堂」)でお話ししてくれました。
ミゾベくんの声は甘口だけれども、とても耳触りがいいので、森山くんの音楽がもつ硬質さとのバランスが凄くよくて、今の人にも響くんじゃないかなと。
僕は55歳のおっさんですけど、この人たちの今作ろうとしてるもの、目指そうとしてるものは、間違いなく新しい音楽に向かっていると思って聴いていたんですよね。

-7月に「深夜の音楽食堂」にミゾベと森山がゲスト出演させていただきましたが、メンバーと接しての印象はいかがでしたか?

昔の「ミュージシャン」は、どこか社会に対して戦闘的で、挑戦的だった人たちが多かったんですけど、今の子はそうじゃない。でもなにか腹の中で企みを持ち、自分たちの作っているものに対して唯一無二の揺るがないものがある。odolには、その独自性があると感じてます。

-松重さんがDJを務めていらっしゃる、FMヨコハマ「深夜の音楽食堂」のゲストは、iri、向井太一、LUCKY TAPES、WONK、TENDRE、yahyelなど、odolと共演していたり、音楽的にも年齢的にも近しい印象のアーティストが多く出演されています。どのような基準でゲストを選定されていますか?

これは僕の個人的な趣味です。この番組を立ち上げたときに番組ディレクターの林さんに好きなミュージシャン50組くらい書いたメモをお渡しして、ゲストとしてお話を聴きたいっていうオーダーから始まった番組なんですよ。
そして、ちょっと変な話ですけども、結局B面(笑)
僕は、子供のころから音楽シーンの中でいうとB面が好きで、ビートルズよりストーンズ、キッスよりクイーンだっていう感覚。ゴールデンタイムにかかっている歌謡曲じゃなくて、深夜のFMでしかかかってないような曲を聴いていたので、申し訳ないですけど、B面の人たちが多いんですよ(笑)
これは抗いようがない自分の趣味嗜好で、そういう音楽がたまらなく好きだし、どんどん若い人たちの中でも出てくる。一般的にウケているであろう音楽ではない、もっと面白いのがあるよって僕らに教えてくれるのは、odolを含めそういう人たちの動きなんじゃないかなあ。彼らの未来を辿っていくことが僕は凄く楽しいし、それが番組でできたらなって思ってこの仕事をさせていただいて…。
この歳になって若い人がこういう音楽をこういう方向性で目指しながらやっているっていう話を聴くことが凄く楽しいですね。
そのうちの一組としてodolのお二人にも来ていただいて、本当に楽しかったです。このodolの音楽がいろんな人に聴いてもらえて、いつか正当に評価される日がくれるんだろうなっていう想いでいます。

-松重さんの音楽的なルーツを教えていただけますでしょうか?

そうですね、10代の頃に東京ロッカーズまわり、中でもフリクションってバンドが好きになって。前衛性が凄かったし、そのプロデュースをやっていたのが坂本龍一さんだったり、坂本龍一さんがYMOやりながら「B-2 UNIT」っていうアルバム出してその変態性…基本的に僕の中でどうしようもない変態がいて、音楽の中でもちょっと歪だったり、どこか足りない、欠けている感覚が色っぽく感じちゃうので、その感覚は今55歳になっても全然変わってないんですよね。
odolの音楽は、見方・聴き方によっては完璧なポップスにも聴こえるんですけども、でもそうじゃない歪さにもの凄く魅力を感じるし、どうしようもなく惹きつけられるんだろうなって。音楽を聴き始めた頃から僕の中では変わってないんですよね。

-最後に、odolのNEW ALBUM『往来するもの』の感想をお願いします。

配信で先にリリースしていた「時間と距離と僕らの旅」「大人になって」「four eyes」の3曲。このクオリティを他の曲も満たしながら、odolっていうバンドがこれから先に作るであろう未来をこの『往来するもの』に感じますね。
本当に音楽的にも、文学的にも一歩先を行こうとしていると思うので、次の展開を期待して聴きたくなる、先へ先へ進ませてくれるような感覚があります。
次にodolはどんな音楽を僕らに提供してくれるのかなっていう気分でこの9曲を聴かせていただきました。

PROFILE

俳優
松重豊

1963年1月19日生まれ、福岡県出身。蜷川スタジオを経て、映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。
2007年には『しゃべれども しゃべれども』で、毎日映画コンクール男優助演賞、『ディア・ドクター』にてヨコハマ映画祭 男優助演賞を受賞。
近年の映画出演作に『ソロモンの偽証』(15)、『アウトレイジ 最終章』(17)、『検察側の罪人』(18)、『コーヒーが冷めないうちに』(18)など。
今後の公開作として、11月9日公開『生きてるだけで、愛。』、19年1月11日公開『この道』などがある。
また、 Fm yokohama『深夜の音楽食堂』にてパーソナリティーも務める。

odol